街中が無料の青空美術館!シンガポールでアート散歩「オブジェ編」
近年、国を挙げて芸術文化の振興に取り組んでいるシンガポール。
公園や駅前広場といった公共スペースには、必ずといっていいほど置かれている「オブジェ」。ほとんどの人が、気にもとめずに通り過ぎていきます。
しかし、よくよく見てみると、『あの人の作品だったんだ!』とか、『こんな素敵な作品があった!』など、思わぬ場所で思わぬアートに出会うことも。
美術館に行かなくても「無料」で楽しめる、シンガポールのパブリック・アートを巡る街歩き。あなたも出かけてみませんか?
美術史に名を残す巨匠の名作
まず最初に攻めるのは、有名どころから。
美術の教科書に必ず載っている巨匠たちの作品をご紹介。
■ 巨匠ロダンの「考える人」
トップバッターは、オーギュスト・ロダン(Auguste Rodin)。『近代彫刻の父』と呼ばれる、19世紀フランス最大の彫刻家です。
ロダンの傑作といえば、真っ先に思い浮かぶ「考える人」ですが、シンガポールには、この名作が2体も存在するんです。
一つは、マリーナベイ沿いのオフィスビル「QUE Bayfront(>> 地図)」の1階オープンスペース。
もう一つは、セントーサ島のレイク・オブ・ドリームズとマーライオンプラザをつなぐ「大階段(>> 地図)」に設置されています。
『2体もあるなんて、本物なの?』と疑問に思った、そこのアナタ!
彫刻芸術の場合、制作した原型で鋳造されたものは、オリジナル作品として認められています。そういうわけで、この2体の「考える人」は正真正銘の本物なので、ご安心を。
■ ヘンリー・ムーア「横たわる像」
「OCBCセンター(>> 地図)」の中庭にある、幅9.45m×高さ4.24m、重さ4トンにものぼる巨大な彫刻作品。
20世紀を代表するイギリスの彫刻家ヘンリー・ムーア(Henry Moore)の「横たわる像」です。
柔らかい曲線と空洞を組み合わせたユニークな造形は、ヘンリー・ムーアが牽引したモダニズムの特徴がよく現れています。
こんなところに?奇才ダリ彫刻の宝庫
シュールレアリスムの奇才サルバドール・ダリ(Salvador Dali)。
歪んだ時計をモチーフに描いた代表作「記憶の固執」はあまりに有名ですが、絵画だけでなく、彫刻でも多くの作品を残しています。
有名なものから、レアなものまで、ダリ・ファン垂涎のコレクションを一挙公開。
■ ダリ「ニュートンに捧ぐ」
「ニュートンに捧ぐ」は、ダリが敬愛していたニュートンへのオマージュとして制作した作品。
ブロンズ像の右手から落ちるボールは、ニュートンがりんごが木から落ちるのを見て、発見したとされる「万有引力の法則」を示唆したもの。
ラッフルズプレイス駅上の「UOBプラザ(>> 地図)」1階の吹き抜け部分に、展示されています。
■ ダリ「宇宙象」
セントーサ島のショップやレストランが集まった「フェスティブ・ウォーク(>> 地図)」の一角に唐突に出現する、こちらの作品。
巨大な躯体に、鳥のような関節ばった細い脚をもつ異様な象。
絵画「聖アントワーヌの誘惑」に初めて描かれて以来、様々な作品に登場。ダリお気に入りのモチーフの一つで、「宇宙象」と呼ばれています。
■ パークビュー・スクエアのダリ作品6点
ダリ鑑賞ツアーの締めくくりに、シンガポール最多(たぶん)6点の彫刻数を誇るダリの殿堂「パークビュー・スクエア(>> 地図)」へ。
まずビルの外、中庭にあるのが2点の彫刻。かたつむりがモチーフの「スネイル・クイーン」と、巻貝の「階段を昇る裸婦」というシュールすぎる出迎えです。
ビルの中には、フロアの4隅にダリ彫刻が、それぞれ1体ずつ。見放題のダリ・コレクションを心ゆくまで堪能できます。
フォトジェニックな現代アート
奇抜な外見に、社会に訴えかけるようなメッセージが込められた現代アート。インスタ映えする作品は、SNSでも話題です!
■ マーク・クイン「Planet(惑星)」
「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」の青々とした芝生の上、宙に浮いたまま寝転ぶ胎児の姿。
イギリスの現代美術家マーク・クイン(Marc Quinn)氏のアート作品「惑星(Planet)」です。
■ ロバート・インディアナ「Love」
アメリカのポップアート作家ロバート・インディアナ(Robert Indiana)の代表作「Love」。
新宿や世界各国にあるLoveアートの多くが赤色であるのに対し、シンガポールにあるのはレアな青バージョン。
サマセット駅近のオフィスビル「Winsland House(>> 地図)」の中庭にあります。
■ 大学にぴったりなアート「Bright Idea」
電球を形どった「Bright Idea」は、アイルランド生まれのマイケル・クレイグ・マーティン(Michael Craig-Martin)によるもの。
設置されているのが、シンガポール・マネジメント大学(>> 地図)というのが、またいいじゃないですか。若い学生たちが閃きを生み出す学び舎のシンボルにぴったりの作品です。
■ ジャウメ・プレンサ「Singapore Soul」
スペイン出身のアーティストジャウメ・プレンサ(Jaume Plensa)による「シンガポール・ソウル」。
「オーシャン・フィナンシャル・センター(>> 地図)」横のオープンエリアに、ちょこんと体育座りをしている巨人像。
近づいてみると、シンガポールで使われる4つの言語(英語・中国語、マレー語、タミル語)の文字で、躯体が形作られているのが分かります。
人の少なくなった夜のオフィス街で白く浮かびあがる像は、ちょっとしたホラー…。
シンガポール彫刻界の祖「Ng Eng Teng」
シンガポール人の芸術家の作品も見逃すことはできません。
彫刻界のパイオニアと呼ばれたNg Eng Teng(黄栄庭/ン・エンテン)は、長い人魚のような脚が特徴的な作品を、多く残しています。
■ Mother and Child
オーチャード・ランデブーホテル(>> 地図)の前で、通りの喧騒を見下ろしているのは、「Mother and Child」。「母と子」という普遍的なテーマで創作した3作品のうち、1つです。
3作目の「Mother&Child」は、HDBに囲まれた「タンパニーズ中央公園(>> 地図)」に設置されていたもの。
現在は、ナショナル・ギャラリーに展示されています。
■ Wealth and Contemptent
ン・エンテンの代表作の一つ「Wealth and Contemptent」。
もともとプラザ・シンガプーラの中庭に展示されてましたが、1997年に寄贈された「NUSミュージアム(>> 地図)」の入口を飾っています。
体の前で両腕を交差させ、上体を反らせた「Conpetence」に対し、足を前に投げ出し、その膝に両手を置く「Wealth」。
互いに補完的なポーズを持つ一対の彫刻が、向かい合う構図が面白い。
日本人アーティストの作品
■ 草間彌生「Pumpkin」
草間彌生はシンガポールで最も人気・知名度が高い日本人アーティスト。
マリーナ地区のオフィスビル「ミレニアタワー(>> 地図)」に飾られているのが、草間さんの代名詞でもある巨大な黄色いカボチャ「Pumpkin」。1階のパブリックスペースに飾られているので、誰でも無料で見学できます。
■ 奈良美智「パフ・マーシー」
日本を代表する売れっ子アーティストの一人、奈良美智(なら よしとも)。「パフ・マーシー」は、彼お得意の、ちょっと澄まし顔した少女の頭部オブジェ。
ブオナ・ビスタ駅前のオフィスビル「ザ・メトロポリス(>> 地図)」のロビーに設置されています。
シンガポールの公的機関が運営するナショナル・アート・カウンシルのホームページには、地図と一緒にパブリック・アートの情報が満載。
ぜひチェックして見てください。
National Art Coucil
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