トランプ×金正恩「米朝首脳会談」シンガポールが歴史に刻んだ6・12
長い一日が終わりました。
本日2018年6月12日、シンガポールのセントーサ島で行われた史上初となる米朝首脳会談。
アメリカのトランプ大統領と、北朝鮮の金正恩委員長という、最も予測不能な指導者2人による直接対話。
シンガポールでの開催が発表されてからも、一旦は「中止」が取り沙汰されたり、また一転して「実施」という紆余曲折を経て、何とか漕ぎ着けた運命の日。
ついに米朝のトップが握手! シンガポールで実現した歴史的な瞬間を、世界中が目撃しました。
数時間に及んだ会談で、『朝鮮半島の完全なる非核化に取り組む』ことが含まれた合意文書にサインしたものの、具体的な詳細は不明なまま。
これからの見通しは、その道の専門家にお任せするとして…。
今日は、シンガポールが「ホスト国」として果たした役割についての考察です。
シンガポールが払う2千万ドルの費用対効果
会談の2日前に、シンガポールのリー・シェンロン首相が明かしたところによると、米朝首脳会談のためにシンガポールが負担する費用は、およそ2千万ドル(約16億円)。
約半分を占めるセキュリティ対策はもちろん、世界中から詰めかけるメディア関係者の受け入れるためのメディアセンターの設置などに、4分の1あたる約500万ドルをかけているとのこと。
『これは国際貢献で、我々は喜んで支払うべきコストである』と国民に理解を求める一方、同時にもらした「It gives us a publicity」という言葉。
この「Publicity(広報宣伝の機会)」こそが、戦略国家シンガポールの真意ではないでしょうか。
■ 16億円をかけたパブリシティの成果は
歴史的な会談に、世界中のメディアが集結し、繰り広げられる取材合戦。
お決まりの「現地からの中継」に必須なのが、その国を象徴するランドマークなどが写り込んだロケーション。
例えば、日本のANNは、マリーナベイサンズを背景に。
英国のBBCは、フラトンとマリーナベイサンズを遠景に。
米国のCBSは、シンガポール金融街の摩天楼をバックに。
一連の報道とともに、映し出されるシンガポールのランドマークやホテル、街の様子。何回、目にしたことでしょうか。
さらに極めつけは、金委員長によるサミット前夜のシンガポール観光。
ガーデン・バイ・ザ・ベイのフラワードームに始まり、マリーナベイ・サンズのスカイパーク、エスプラネードのジュビリーブリッジからのマーライオンという定番コース。
シンガポールの名所を楽しそうに歩く金正恩氏の姿が、メディアを通じて全世界に発信されました。
■ ホスト国としての見せつけた存在感
シンガポールでの米朝首脳会談開催が正式に発表された5月11日から、約1ヶ月。
この短い期間で、会談場所・ホテルなどの選定、警備、メディア対応など、無事にやってのけたシンガポール。
今回のような歴史的会談のホスト国としての役割は、オリンピックのホスト国と同じくらいの意義があったと思います。
- 発達したインフラ
- 安全でクリーンな街
- 秩序・安定した社会
- 英語が通じる利便性
会談の舞台として選ばれることで、広く認知されるようになった「先進国」「中立国」のイメージ。
国際的な会議や企業の誘致を国家戦略とするシンガポールにとって、今後さらなる追い風になることは、間違いありません。
会見でリ・シェンロン首相が「It’s plus for Singapore」と語ったとおり、支出したお金以上のアピールをすることに成功したシンガポール。
戦略的なしたたかさは、流石と感服いたしました。
■ 東京オリンピックは大丈夫?
対する、我らが日本国どうでしょうか。「ホスト国」となる2020年の東京オリンピックまで、あと2年あまり。
この一大イベントに国は巨額の3兆円を支出するようですが、16億円でシンガポールが世界に印象づけたほどのことを日本ができるんでしょうか。
うーん、心配…。
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