絵が物語るシンガポールの風物詩「Yip Yew Chong」2回目の個展
前回リポートした初個展『Something, Somewhere, Somewhen』に続き、早くも始まったYip Yew Chongさん2回目の個展。
初個展とは異なる切り口で描かれたYipさんの世界を、一緒に楽しみましょう!
Stories from Yesteryear
■ 駅直結!会場はCBDど真ん中のホテル
会場となっているのは、「ソフィテル・シンガポール・シティセンター」。
タンジョンパガー駅直通のソフィテルホテル内の5階。
会議室や宴会場の前段スペースに、23点のアクリル画と、4点のデジタル画、3点のスケッチが展示されています。
■ 現在のシンガポールにつながる過去のストーリー
Yipさん2回目の個展のタイトルは、『Stories from Yesteryear』。
展示室に入って、一番最初に目にする作品は、その昔、ボートキーで聴衆を集めた語り部を描いたもの。
彼が話し聞かせる民話や伝承は、祖国を離れてシンガポールにやってきた労働者たちの心にどう響いたのでしょうか。
この個展で描かれているのは、それぞれに異なる文化・宗教・言語をもつ人々が大切に紡いできた過去のストーリー。それは、現在のシンガポールにつながっています。
絵で学ぶ!シンガポールの年間行事
今回の展示作品の中でも、特に目を引いたのがシンガポールの伝統行事や風物詩を描いたもの。
ここでは作品の一部を、新年から〜クリスマスまで時系列順(年により多少の前後あり)にご紹介。
Yipさんの絵画で学ぶシンガポールの年間カレンダーのスタートです。
■ 大晦日(New Year’s Eve)
旧正月の前日、つまり「大晦日」の様子を描いた作品。
楽しそうにリユニオン・ディナーの食卓を囲む大家族のかたわらで、戻ってこない息子を一人で待ち続ける老婦人の姿が対照的。
■ チンゲイ・パレード(Chingay)
シンガポールで毎年開催されている「チンゲイ・パレード」。1972年に禁止された爆竹の代わりに、旧正月を盛り上げるイベントとして始まった恒例行事。
かぶり面(大頭頭)や竹馬、獅子舞など、通りを練り歩くパフォーマーたちが、色鮮やかに描かれています。
■ 墓参り(Tomb Sweeping)
毎年、4月5日前後にあたる「晴明節」は、中華系の人々にとって年に一度の墓参りの季節。
トラックで家族総出でやってくる郊外の墓地は、緑に覆われた原っぱ。
お墓の掃除や先祖への供養も、子供にとってはピクニック気分の楽しいお出かけだったに違いありません。
■ ゲイラン・セライ・バザール(Geylang Serai Bazaar Raya)
イスラム暦で「聖なる月」と定められたラマダンの1ヶ月、日の出から日没まで断食に励むイスラム教徒たち。
シンガポール最大規模のラマダン・バザールが開催される有名な「ゲイラン・セライ」。
飲食を許される日没後、一斉に外へ繰り出す人々と屋台がどこまでも続いています。
■ ハッジ(Preparing for the Haj)
シンガポールで祝日となっているハリラヤ・ハッジ(犠牲祭)。
ハッジとは、イスラム教徒にとって人生の一大イベントである「聖地メッカへの大巡礼」のこと。
「ハッジの支度」と名付けられた作品では、黄金に輝くサルタン・モスクを背景に、旅立ちの準備をする人々で賑わった1970年代のカンポングラムが描かれています。
■ ハングリーゴースト・フェスティバル
旧暦の7月は、「ハングリーゴースト・フェスティバル(中元節)」の季節。
地獄の門が開かれ,この世を彷徨う死者の魂を鎮めるために、街のあちこちで線香が焚かれ、紙製のお供え物(お金・車・携帯・時計などを模したもの)を燃やしている風景を目にします。
■ 十五夜(Mid-Autumn Night)
空に中秋の名月が輝く旧暦8月15日の夜。
ろうそくで灯されたランタンで遊ぶ子どもたちに、2階で月に祈る母親、月餅とポメロを囲んでおしゃべりに興じる大人たち。
チャイナタウンで生まれ育ったYipさんの思い出がつまった作品です。
■ クス島巡礼(Pulau Kusu)
海で難破した2人の船員を、巨大なカメが救ったという伝説から、中国語で「カメ」を意味する「クス」と呼ばれるクス島。
助けられた中国人とマレー人が、それぞれ建立したとされる中国寺院とマレー聖廟が残る小さな島には、毎年旧暦の9月になると、シンガポールから多くの参拝客が訪れます。
■ ティミティ(Timithi)
毎年、ディパバリの1週間前の月曜日に執り行われる「ティミティ」。
叙事詩『マハーバーラタ』の中で、自らの潔白と純潔を示すために炭の上を裸足で歩いたという女神の逸話に因んだ、ヒンドゥー教の火渡りの儀式です。
儀式の会場となるスリ・マリアマン寺院。絵の中では、3段のゴプラム(塔門)と藁葺きの屋根と、1910年の火災で焼失する前の姿で描かれています。
■ ディパバリ(Deepavali Eve at Serangoon Rd)
光が闇に打ち勝つことを祝う「ディパバリ」は、ヒンドゥー教徒にとってはお正月のようなもの。
リトルインディアの大通りセラングーンロードは、年末のアメ横さながら、新年の買い出しをする人々でごったがえしています。
■ 冬至(Winter Solstice)
モンスーン・シーズンが始まると、雨が多くなるシンガポール。
そんな中、母親と兄弟たちが一生懸命作っているのは、湯円と呼ばれるカラフルな丸いお団子。
冬至の日には、この湯円を食べるのが中華系の習慣だそうです。知らなかった!
■ クリスマス(Christmas at Parish Hall)
1912年、ポルトガルの宣教会によって建てられたセント・ジョセフ教会。
クリスマス・ミサの終了後、教区ホールで朝食をとるユーラシアン・コミュニティーを描いた作品。
テーブルの上には、ティーポットと一緒に、スジー・ケーキやパン・スジーといったユーラシアンの伝統料理が並んでいます。
カタログは、下記Yipさんの公式サイトからダウンロード可能。
個展『Stories from Yesteryear』は3月31日まで。残りあと1週間なので、お見逃しなく!
Stories from Yesteryear
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