アート散歩「Yip Yew Chong」壁画で巡るシンガポール原風景への追憶
【更新】3点(シティ2、ウッドランズ1)追加
最近シンガポールの街角でよく見かける「壁画アート」。
なかでも、シンガポール草創期の原風景を温かみのあるタッチで生き生きと描くYip Yew Chong(イップ・ユー・チョン)さんは、最も人気のあるアーティスト。
下絵で大まかな位置と構図を決めて、一気に描き上げるYipさん。
下絵(ビフォアー)と完成図(アフター)。
完成した壁画アートは、写真スポットとしても大人気。
在住者はもちろん、2回目以降のシンガポール旅行に、壁画を巡るアートな街歩きはいかが?
ここに注目! YYC壁画の楽しみ方
■ 署名を探せ!
署名は、作品に息を引き込む最後の仕上げ。まさに画竜点睛の瞬間です。
Yipさんこだわりの遊び心ある署名も、アートの見所。絵のストーリーに溶け込むように入ったサインを探してみてください。
■ シンガポール名物のローカルフード
カヤトーストにサテー、クエにラクサなど、壁画にはシンガポールのローカルフードがいっぱい。全部食べたことありますか?
■ 最多出演賞! 名脇役は〇〇?
YC壁画で最多出演を誇るのは、ネコちゃん! あそこにも、ここにも、何気ない場面に登場し、存在感を放つ名脇役です。
■ シンガポール的、昔懐かしのアイテム
シンガポーリアンの郷愁を掻き立てる懐かしのグッズの数々。外国人から見ても、イイ味出しています。
チェックポイントを押さえたところで、いよいよアート散歩に出発!
Yip Yew Chongさんの壁画は、近い場所に固まっているので、エリアごとに回ってみましょう。
エヴァートンロード周辺
Yip Yew Chongさんの記念すべき第1作・第2作・第3作が集まってるエヴァートンロード周辺。
■ Amah(Aug. 2015)
エバートンロードに面している壁に描かれているのは、「アマ」と呼ばれる家政婦さんが洗濯をしている場面。
頭上に干されているのは、シンガポールの民族衣装「ケバヤ(ブラウス)」や「サロン(巻きスカート)」でしょうか。
華やかな模様と色が目を楽しませてくれます。
■ Barber(Sep. 2015)
側道のほうの壁にはあるのは、「床屋」をテーマにした2作目。
足が届かない大きな理容チェアに頑張って腰掛けているチビッコ客の姿が初々しい。
壁の水道管に吊り下げられている缶。現場にあるモノと絵を組み合わせるというトリックアート的な仕掛け。
■ Provision Shop(Dec. 2015)
50年代〜80年代の「雑貨屋」をテーマにした壁画。
氷の販売や駄菓子屋、豆乳売りのリヤカーなど、今は見なくなった古き良き時代が蘇るシンガポール版「Always 三丁目の夕日」といった作品。
チョンバル
■ Bird Singing Corner(Mar. 2016)
いくつも吊り下げられた鳥籠に下で、コーヒーを飲みながら語らう鳥のオーナーや愛好家たち。
かつては週末ごとの恒例だった「バードコーナー」も、周辺の再開発・ホテル建設などによって閉鎖され、チョンバルから姿を消してしまった風景の一つ。
■ Home(Mar. 2016)
チョンバルはシンガポールで最初にHDBが建てられたエリアの一つ。
70年代の家がテーマの「ホーム」に描かれているのは、当時あこがれの家電であった白黒テレビや黒電話。
新聞の一面には、シンガポールの初代首相であるリー・クアンユー氏や、「鉄の女」サッチャー元英首相の姿が!
■ Pasar&the Fortune Teller(Apr. 2016)
マレー語でマーケットを意味する「パサール(Pasar)」。
買い物をする親子の姿や、ホーカー屋台で食事する人たち。そして市場のそばで店開きする「占い師」。
マーケットのにぎわいが伝わってきます。
■ Tuan Yuan Bak kut Teh(Aug. 2018)
「テュアン・ユアン・バクテー」の壁面に描かれているのは、19世紀から20世紀初頭にかけての発展を担った苦力(クーリー)たち。
「肉骨茶」は、肉体労働に従事する彼らを支えるスタミナ食でした。
チャイナタウン
■ Thian Hock Keng Mural(Apr. 2017)
昔、海岸線であったTelok Ayer Stに建つ「シアンホッケン寺院」の外塀に描かれた、約44mにわたる超大作。
現在の中華系シンガポーリアンのルーツとなったのが、2週間にも及ぶ危険な舟路を経て、中国南東部の沿岸地方(福建省)からやってきた移民たち。
Telok Ayer Bayに無事到着した人々は、航海の守護神「天后聖母(媽祖)」を祀るシアンホッケン寺院を詣で、航行成功の感謝を捧げました。
壮大な叙事詩のような壁画には、故郷・家族との別れから、シンガポールで発展・成功していくまでの道のりが描かれています。
壁画の中央部で、ひときわ華やかに描写されているのは、「天后聖母(媽祖)」像を担いでの行進の様子。
■ Letter Writer(Feb. 2018)
テーブルで文字を書いているのは、「代筆屋」のおじさん。
その昔、文字の読み書きができない移民たちに代わって、中国に残してきた家族への手紙を代筆する大切な役割を担っていました。
■ Cocoadaia(Jun. 2018)
Amoy Stにある小さなマフィン屋さん「Cocoadaia」。
店内の壁には、オーナーである2人の姉妹が、石窯の薪オーブンでマフィンを焼いている様子が描かれています。
■ Mid-Autumn Festival(Sep.2018)
カラフルな灯篭に、テーブルに並ぶ月餅。この2つが欠かせないお祭りといえば、「中秋節」。
作品の場所は、シンガポール最大のランタン・フェスティバルが開催されるチャイナタウン。駅の出口Aを上がってすぐ、パゴダストリートの横道の壁に描かれています。
■ Paper Mask & Puppet Seller(Oct.2018)
4作品が集まるチャイナタウンの細い路地「モハメド・アリ・レーン(Mohamed Ali Ln)」。
一番端に登場したのは、カート一杯にカラフルなお面や人形を山積みにした「お面と人形売り」のおじさん。
1980年代に実在した「Yeo Ban Kok(楊万国)さん」という方がモデルになっているそうです。
■ Mamak Store(Oct.2018)
Yip Yew Chongさんの幼少期の記憶をもとに、サゴ・レーン(Sago Ln)に実在していた「Mamak Shop」を描いた作品。
露台でくつろいでいるのは、お店のご主人Abdul Kadirさん。
ん? 上からカゴが降りてきましたよ?
『どうなってるの?』の答えは、次の絵で明らかに!
■ The Window(上)& Lion Dance Head Maker(下)(Oct.2018)
モハメド・アリ・レーンの一番奥では、高い壁面を利用して、文字通り1階と2階の2つの場面を再現。
「窓」というタイトルの2階部分は、異なる民族が一緒に暮らしていたショップハウスの日常を切り取ったもの。
右窓の部屋に住むのは、「Mamak Store」を営むKadirさん一家。先ほどカゴを上から降ろしてきたのは、奥さんだったようです。旦那さんのお昼ゴハンでも入っているのでしょうか?
左窓の部屋はLeeさん一家。1階部分に描かれているのは、「ライオンダンスの獅子面づくり」に精を出すお父さんの作業場です。
■ My Chinatown Home(Apr. 2019)
Yip Yew Chongさんが幼少期を過ごしていた長屋を再現した作品。
蚊取り線香やカセットプレイヤーなどの懐かしのアイテムから、壁のヤモリ、天井から吊るされた棚など、実際の思い出をもとに描かれたオマージュ的作品。
■ Cantonese Opera(Apr. 2019)
テンプルストリートの2階建の壁面に、きらびやかな「広東オペラ」のステージが出現。
舞台のまわりは、つめかける群衆と、観客相手に商売する人たちで大賑わい。
『チャイナタウンに広東オペラの絵を描く』という、Yip Yew Chongさんの長年の夢が実現した作品です。
■ Detective Conan in Chinatown(May 2019)
チャイナタウンの露天でドリアンを味見しているコナンくん。
シンガポールを舞台にした劇場版アニメ『名探偵コナン 紺青の拳』の公開にあわせて、描かれたもの。
ブルーサファイアや怪盗キッドのマークなど、映画にまつわるアイテムが壁画の中に隠されています。
■ 30 Temple St(Nov. 2021)
チャイナタウンのテンプルストリートの路地裏に、完成した大作。
お客さんで賑わうコピティアムに、日用品が並ぶ雑貨店。
郵便受けには「30號 登婆街」と、この作品があるテンプルストリートの住所が書かれています。
色鮮やかなウェットマーケット。お客さんと店員さんのやりとりが聞こえてきそうです。
■ Clog Maker & Kitchenware Shop(Apr.2023)
1948年、チャイナタウンで創業した「劉再成」は、木製の下駄と台所用品を扱う商店。
ゴム製のサンダルの普及とともに下駄の販売は廃れてしまったものの、台所用品の販売は現在でも続いています。
アラブストリート
■ Coffee Story(Dec. 2015)
かつて「A.R.C Cafe」というカフェがあった3階建のショップハウスの壁面一杯に描かれている「コーヒーストーリー」。
昔ながらの方法でコピを入れているおじさんがいる一方で、エスプレッソマシーンから抽出されるコーヒーやラテアートなど、新旧のコーヒーが競演。
壁の左端に「テ・タリ」を注ぐ名物おじさんがいるのも、アラブストリートならでは。
■ Satay Club(Jul. 2016)
かつてビーチロード周辺にあった「サテー屋台」を描いた作品。
■ Kampong Gelam(Aug. 2016)
ムスリム(マレー系移民)の多いカンポングラム地区にあったという、メッカ巡礼のための品物を揃えた商店。
バスケットの間から顔をのぞかせる隠しキャラ!
■ Kampong Jemput 1(Aug. 2021)
黄金に光るスルタンモスクの参道から1つ離れた路地裏に描かれているのが、こちらの作品。
子供たちはハシゴを登って遊ぶ子供たちや、荷物を上げ下げするバスケットなど、古き良きカンポングラムの様子が蘇っています。
■ Hamid Store & Money Changer(Dec.2022)
Yipさんには珍しいモノクロ壁画があるのは、アラブストリートの一角。
半世紀以上前、この場所で営業していたハミル氏のママショップ(雑貨店)と両替商の姿が、街角によみがえりました。
■ Kg Basket Shop(May.2023)
もともとバスケットや籐製品を扱うお店が軒を連ねていたバグダット・ストリートの壁面に描かれた作品。
大量のバスケットと一緒に、表情豊かな3匹のネコが登場しています。
■ The Kampong Gelam Mural(Aug. 2023)
「The Kampong Gelam Mural」は、アラブストリート(マスカット・ストリート)沿いに出現する巨大な壁画。
カンポングラム(Kampong Glam)と呼ばれたアラブストリート界隈の歴史・文化を描いた大作。
かつて、この地域を彩ったビジネスや暮らしの様子から、サテやテタリといった名物、更には地図に至るまで、多岐にわたる内容が詳細なタッチで描かれています。
リトルインディア
■ Village Curry(Jun. 2018)
バナナリーフの上に盛りつけられた、美味しそうな南インド料理が描かれているのは、リトルインディアにある食堂「ヴィレッジ・カレー」。
チャパティーやドーサや焼く職人さんにまじって、牛やニワトリなども登場。
のどかなインドの農村風景が描かれています。
■ tHIS is our STORY(Mar. 2023)
ムスタファセンターにほど近い、バングラデシュ・スクエア(Bangladesh Square)の一角に完成した大作。
19世紀初頭、インド北部ウッタル・プラデーシュ州からシンガポールにやってきたヒンドスタン系移民の歴史を、36m x 8mにおよぶ大画面に描いています。
ブラスバサー&ドビーゴード周辺
■ National Library & MPH(Apr. 2016)
シンガポールの有名男子校「公教中学」の80周年を記念する「ヘリテージ壁画」3部作。
1935年の開校当時の校舎が残るウォーターストリートの建物内に描かれています。
奥行きと臨場感を生み出す、扉(ドア)を利用した構成。
よく見ると、学生証には画家本人の名前が! 芸が細かい!
■ National Theatre & Odeon Cinema(Apr. 2016)
1950年代〜80年代まで大衆娯楽の中心だった「国立劇場」や「オデオン・シネマ」。上映中のポスターには、ロッキーやスターウォーズ、酔拳など懐かしの名作ぞろい。
■ Army Market & NCO Club(May 2016)
シンガポールで「ナショナルサービス(兵役)」の制服といえば、グリーンの迷彩服に黒ブーツ。この格好は、昔も今も変わっていないようですね。
■ Memories of Plaza Singapura(Sep. 2016)
Dhoby Ghaut駅に隣接している「プラザ・シンガプーラ」。
1970年〜90年、1990年〜2010年、そして現在(2016年)と、3世代にわたる変遷が描かれています。
ウルトラマンやどらえもん、キティちゃんにピカチュウなど、日本人にも馴染みのあるキャラクターが、たくさん登場していますよ。
■ History of the National Museum of Singapore(May 2017)
国内最古の博物館である「シンガポール国立博物館」の歴史と逸話をまとめた作品。円形大広間の階段裏に設置されています。
シティ&中央商業地区
■ From Shoreline to Skyline(Apr. 2024)
金融街のド真ん中にあるホーカーセンター「ラオパサ」の130周年を記念して、制作された作品。
海沿いの市場として始まった昔の様子から、シンガポール随一のビジネス街になった現代までの変遷を、10mにわたる壁面に描写しています。
■ Legend of the Fire Fish(May. 2024)
フォートカニング駅からすぐ、クラークキーに並ぶ倉庫群のファサードに描かれた「Legend of the Fire Fish」。
同じくシンガポール出身のアーティストであるTobyato氏とのコラボレーションで、Tobyatoさんの流れるような火の魚をベースに、Yipさんお得意の人物画が融合した作品。
2人の画家を想起させる場面や署名もあって、ユーモアたっぷり。
セントーサ周辺
■ National Day(Aug. 2018)
8月9日はシンガポールの独立記念日。
ショッピングモール「ハーバーフロントセンター」の通路に描かれているのは、シンガポール草創期の「ナショナルデー」の様子。
花火に屋台、そしてHDBに掲げられた国旗。
建国から50数年で、目覚ましい発展・変化を遂げたシンガポールですが、国家一丸となって建国を祝う人々の笑顔は、今も昔も変わりません。
■ Waves of The Strait(Aug. 2019)
セントーサ島のシロソ砦にある「海峡の波」と題された作品群。
約230mにわたるシロソ・ロード沿いに、波打つ道路に浮かぶ帆船や、砦の見張り窓など、トリックアートのような作品が点在しています。
オーチャード&ボタニックガーデン
■ Ethnobotany(May 2018)
シンガポール初の世界遺産に認定された「ボタニックガーデン」。
エスノボタニィ・ガーデンにある4つの岩は、それぞれ文化、工芸、医薬、儀式という4つ角度から「民族植物学」を描写したもの。
■ Singapore Food Paradise(Oct. 2018)
2018年の「ITB Asia(旅行関連業界の見本市)」のために制作されたパネル作品。
現在は、オーチャードにあるシンガポール政府観光局(Singapore Tourism Board)のB1階エレベーターホールに展示されています。
シンガポールの多彩な食文化を象徴するローカルフードの数々が、テーブルに所狭しと並んでいます。
チャンギ・イースト方面
■ Kampung(Nov. 2015)
豊かな自然の中で、パパイヤをとったり、釣りをする子供たち、そして動物たちなど。
現在のシンガポールではあまり見なくなってしまった「村」での暮らしぶりが垣間見れます。
■ Changi Village(Oct. 2016)
店舗の壁と窓を生かした壁画「チャンギビレッジ」。古い家屋の窓から子供たちが覗いています。
■ Singapore Rojak(Jul. 2018)
チャンギ空港ターミナル4の地下1階(パブリックエリア)に描かれているのが、約37mの大作「シンガポール・ロジャ」。
作品名である「ロジャ(Rojak)」とは、シンガポールで親しまれているローカルフードの一つであると同時に、もともとマレー語で「ごちゃ混ぜ」を意味する言葉。
多民族・多文化が共存しているシンガポールの隠喩として、名付けられたのでしょう。
そんな多様性の代表例が、シンガポールの食文化。屋台には、ナシレマ、ロティプラタ、チャークイティオ、チェンドルなどが並んでいます。
美しいタイル装飾や、色鮮やかなニョニャ菓子など、独自の伝統が根付く「プラナカン文化」。
「中秋節」を彩るランタンと月餅があれば、ヒンドゥー教の花飾りもあり。
中華・マレー・インドなど、多彩な文化の「ごちゃ混ぜ(ロジャ)」であるシンガポールを体現した壁画は、シンガポールの玄関チャンギ空港を飾るにふさわしい作品です。
■ TRANS Family Service Centre(Apr. 2019)
「トランス・ファミリー・サービスセンター」の施設が入るHDB(公団)の一角に描かれたのは、スポーツ・娯楽・勉強に勤しむ老若男女の姿。
満点の星空の下、スクリーンに映し出される『スターウォーズ』鑑賞。
ボイドデッキ(共用部分)の壁面だけでなく、柱を利用した立体的な構図づくりも秀逸!
■ Samsui(Apr. 2019)
チャンギ空港に併設された複合施設「ジュエル」にある人気レストラン「スープレストラン」のために描かれたもの。
レストラン名の由来であるサムスイ・ウーマンを連想させる「赤い頭巾」を中心に、背景の植物模様や、実物のランチボックスなど、抽象的な描写スタイルとインスタレーションを組み合わせた今までにない作品。
アンモキオ&郊外
■ Reminiscing Ang Mo Kio(Mar. 2018)
シンガポール郊外のベットタウン「アンモキオ」。
古くは福建語で「紅毛橋」(現在の表記は「宏茂橋」)と呼ばれた地名は、シングリッシュで白人を指し示す俗語「アンモー」と、橋を意味する「キオ」に由来。
昔、この周辺一帯を繋いでいたと言われる「9つの橋」を蘇らせたものが、Kebun Baru Marketの壁画です。
向かい側の壁に描かれているのは、たくさんの鳥籠。
アンモキオは、週末ごとに鳥愛好家たちが集う「バード・クラブ」が存続している数少ないエリアなのです。
Teck Ghee Court Marketの一角に広がるのは、昔のアンモキオにタイムスリップさせるような情景。
台所で料理する音、売り子の掛け声や、ニワトリや家畜の鳴き声など、暮らしの音が今にも聞こえてきそうな作品です。
■ Hougang Hainanese Village(Jul.2021)
1980年代まで、多くの海南人家族が暮らしていた「ホウガン海南村」の様子を、長さ13mもの壁面に再現した大作。
口頭伝承をもとに、公立学校や、お寺、食堂、市場などが描かれています。
■ Lai Wah Restaurant(2021)
ベンデマー・ロード(Bendemeer Rd)沿いにある「麗華酒家(Lai Wah Restaurant)」の外壁を飾るデジタルアート。
もとは中国の移民たちが食べていた質素な料理を、今のような多種多様な具材に彩られた「ユーシュン(魚生)」へとアレンジしたのが、このお店の料理人だったとか。
今では、シンガポールの旧正月に欠かせない料理となりました。
ウッドランズ方面
■ Woodlands(Mar. 2019)
MRTアドミラルティ駅近くのHDB(公団住宅)1階の共用空間を活用した作品「ウッドランズ」。
農村、自然、近未来の3つのゾーンに分かれています。
■ The Rail Mall – 9th Mile Fuyong Estate(Sep. 2019)
ヒルビュー駅から徒歩数分の位置にある「レイルモール」。この壁面に出現した懐かしの雑貨店とテタリショップ。
現レイルモールの裏手側にあった1950年代の住宅区の名をとって、雑貨店の店名は「芙蓉」。
テタリショップの「9th Mile Sarabat」は、昔の地点標システムにおいて、起点となる中央郵便局(現フラトンホテル)から9マイルの位置にあることが由来となっているようです。
■ The Rail Mall – The Last Train(Sep. 2019)
上絵の隣に描かれているのが、「ラスト・トレイン」。
2011年に廃止されたマレー鉄道が、ブキティマ駅に入線する最後の勇姿を切り取ったもの。
廃線跡は現在、「Railway Corridor」という人気のウォーキングコースになっており、レイルモール横にも入口ポイントがあります。
■ The Rail Mall – The Last Tiger(Sep. 2019)
「ラスト・トレイン」の向かい側の壁面に描かれているのが、「ラスト・タイガー」。
大規模農園の開発により、ジャングルの伐採が進むにつれ、村や農場に出没するようになった野生の虎と、それを狩る人々。
この壁画は、発展の陰で犠牲になった自然や動物、労働者たちに捧げられています。
■ Woodlands Health Campus(Jul. 2024)
2024年に完成したばかりの大規模医療センター「ウッドランズ・ヘルス・キャンパス」の壁面に描かれた作品。
遠くには、ジョホール海峡をわたるコーズウェイやRTSなど、マレーシア国境に近いウッドランズならではの景色が描写されています。
シンガポール国外
■ Kedai Sin Ma(Aug. 2017)
Yipさんのマレーシア初作品があるのは、イポーの旧市街。
お腹を出したおじさんが店番をする「ケダイ・シンマ」。
シンガポールの「シン」と、マレーシアの「マ」を組み合わせて、「星馬商店」。両国の友好を願うYipさんの思いが込められた作品です。
■ Rojak Tree(Aug. 2017)
1つの木に、ジャックフルーツ、パパイヤ、ポメロ、ドリアンと、色んなフルーツの実をつけた「ロジャ・ツリー」。
マレーシア人アーティストとの共同作品。
■ YWCA Penang(Nov. 2018)
ペナンにある子供と女性を支援する施設団体「YWCA」内に描かれている作品。
施設を訪れたときは門が閉まっていたので、帰ろうとしたら、ちょうど関係者の方がいらっしゃったので、ご厚意で入れていただき、許可のもと撮影させていただきました。
■ Folklore by the Sea(Dec. 2018)
ペナンの観光スポットの一つ「周一族の橋」に描かれた壁画。
水上集落に暮らす人々の日常を切り取ったもの。
■ The Tree(Dec. 2018)
クアラルンプールにできた新しい商業施設のために描かれた作品。
2階の中庭吹き抜け部分に茂るバンヤンツリーを借景に生かした空間アート。
個展&期間限定その他
■ Something, Somewhere, Somewhen(Jan12-Mar14, 2021)
Yipさんの初個展「Something, Somewhere, Somewhen」が、2021年1月12日から3月14日まで、Art Porters Galleryで開催されました。
下記の別記事で、詳細をリポート。
■ Stories from Yesteryear(Feb17-Mar31, 2021)
2021年2月17日から3月31日まで開催されたYipさんの2回目の個展「Stories from Yesteryear」。
個展の内容は、別記事をチェック。
■ I Paint my Singapore(Nov.2023-Jan.2024)
2023年11月30日から2024年1月1日まで、ラッフルズシティ・コンベンションセンターで開催されたYipさんの3回目の個展。
「I Paint my Singapore」と題し、Yipさんが、自身が生まれ育ったシンガポールの懐かしい景色や思い出を、60m及ぶキャンバスに詰め込んだ1枚の連作。
■ SHERMAY’S Packaging(Mar. 2017)
シンガポールの老舗食品メーカー「シャーメイズ」が販売しているカレー粉のパッケージデザインも、Yipさんが描き下ろしたもの。
温かみのある手描きタッチが、何代にもわたって受け継がれてきたの家庭の味にぴったり。
一箱$12.95で手に入れることができるYipさんの作品です!
■ Watching Sesame Street, 1969(Mar. 2019)
1969年の放送開始から50周年を記念して制作された、「セサミストリート」とのコラボ作品。
チョンバルに描いた作品「Home」の構図をもとに、ソファでくつろぐビッグバードが、白黒テレビでセサミストリートの番組を見ているというもの。
■ View from Elgin Bridge(Oct. 2019)
ボートキーを望むエルジン橋のたもとに設置された期間限定のインスタレーション。
目線を低くして作品を見ると、土台部分と背景が一体化して、ミニチュアのトンカン船がシンガポール川に浮いているかのように見えます。
上記以外にもたくさんあるYip Yew Chongさんの作品。
現在も精力的に活躍されていることからも、また新しい壁画アートが生まれる可能性も大。
引き続き、Yip Yew Chongさんの創作活動に注目して、随時アップデートしていきます!
Yip Yew Chong
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